審査委員長: | 京極 高宣氏(日本社会事業大学学長) |
審査委員: | 内田 洋司氏(フォトジャーナリスト・元朝日新聞社カメラマン) |
清水 鳩子氏(主婦連合会参与) | |
中村 春基氏(社団法人日本作業療法士協会副会長) | |
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部企画課(社会参加推進室) 室長 江波戸 一敏氏 |
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経済産業省 商務情報政策局 サービス産業課医療・福祉機器産業室 室長 藤本 康二氏 |
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主催者代表 |
福祉用具の普及・啓発を目的とした「福祉用具の日」も、今年の10月1日で3周年を迎える事になります。全国公募はこの記念事業として行われているものですが、初年度は福祉用具普及に役立つ標語、そして昨年度は福祉用具のアイデアコンクールと続き、3回目となる今年度は「福祉用具のある風景」というテーマでのフォトコンテストでした。
私の知る限り、福祉用具を題材としたフォトコンテストは余り例がなく、募集期間も1ヶ月と短かったにもかかわらず、全国より11歳から96歳の方まで幅広い年齢層からの222作品の応募がありました。中には学生のクラス単位での応募もあり、写真撮影を通じて、このような若い方々が福祉用具の利用者と様々な形で交流をもつ光景が想像できます。作品のよしあしも大切ですが、このような触れ合いもコンテストのもう一つの目的といえるでしょう。
審査では写真の技術的な評価はもとより、福祉用具が私たちの生活や暮らしの中に自然と溶け込んでいる様子をいかに表現しているか、そのような視点から審査するよう心がけました。そして最終選考に残った作品はどれも甲乙つけがたく、選考はとても難しい作業になりました。
その中でも最優秀賞を受賞したのは東京都の辻川吉夫さん「ゴールをめざして」です。マラソン大会のスタート直後、観衆が見守る中、障害をもつお子さん二人がゴールを目指して走り始めた一瞬をとらえた作品です。ゴールまでの道のりは険しくても、それを乗り越えていこうとする二人のエネルギーが感じられます。男の子が自在に扱っているロフストランド・クラッチが印象的です。
厚生労働大臣賞は愛知県の奥野喜久雄さん「雪にも安心」です。雪の合間の晴れた日、待ちかねたように歩行補助車を使っての外出。そんな情景を想像させる作品です。雪解けのわだちの中、路面を踏みしめる利用者の歩行を、四つの車輪が力強く支えています。今、福祉用具には自立支援の役割が強く求められていますが、まさに厚生労働大臣賞にふさわしい作品といえます。
経済産業大臣賞は大阪府の才脇信吾さんの「ふれあい」です。野外での音楽祭。サックス奏者が電動車いすを自在に扱っての演奏です。観客もご本人も音楽を楽しんでいる、そんな雰囲気が伝わってきます。障害の有無に関係なく誰もが人を喜ばせる側になれたら。夢を実現するには福祉用具の更なる技術進歩と普及を期待したいところです。作品の中の奏者のたくましさから、そんな事を考えさせられます。その意味でも経済産業大臣賞にふさわしい作品といえます。
惜しくも上記3賞には漏れましたが、特選6作品、入選9作品はいずれも、福祉用具が生活に溶け込んでいる雰囲気や、利用者のいきいきとした表情を上手に伝えるもので、より上位の賞に値する秀作ばかりです。同様のコンテストがあれば再度のチャレンジを期待したいものです。
全体の傾向としては、テーマを「車いす」にしている作品が多かったようです。これは福祉用具の技術的な進歩や社会基盤の整備により、車いす利用者の外出機会も増えて、それが日常的な光景になってきたとも言えます。一方、一般の方にとって分り易い福祉用具が、未だ「車いす」にとどまっているという解釈も成り立ち、今後の福祉用具の普及における課題を示しているようにも思われます。
いずれにしても、これら福祉用具を表現した優れた作品を、未来に向けた貴重なメッセージとして活用していく事が、このコンテストの意義を高めていく事にもなります。そして、それはとりもなおさず、福祉用具の発展と私たちの生活の豊かさにもつながっていくことでしょう。
私の知る限り、福祉用具を題材としたフォトコンテストは余り例がなく、募集期間も1ヶ月と短かったにもかかわらず、全国より11歳から96歳の方まで幅広い年齢層からの222作品の応募がありました。中には学生のクラス単位での応募もあり、写真撮影を通じて、このような若い方々が福祉用具の利用者と様々な形で交流をもつ光景が想像できます。作品のよしあしも大切ですが、このような触れ合いもコンテストのもう一つの目的といえるでしょう。
審査では写真の技術的な評価はもとより、福祉用具が私たちの生活や暮らしの中に自然と溶け込んでいる様子をいかに表現しているか、そのような視点から審査するよう心がけました。そして最終選考に残った作品はどれも甲乙つけがたく、選考はとても難しい作業になりました。
その中でも最優秀賞を受賞したのは東京都の辻川吉夫さん「ゴールをめざして」です。マラソン大会のスタート直後、観衆が見守る中、障害をもつお子さん二人がゴールを目指して走り始めた一瞬をとらえた作品です。ゴールまでの道のりは険しくても、それを乗り越えていこうとする二人のエネルギーが感じられます。男の子が自在に扱っているロフストランド・クラッチが印象的です。
厚生労働大臣賞は愛知県の奥野喜久雄さん「雪にも安心」です。雪の合間の晴れた日、待ちかねたように歩行補助車を使っての外出。そんな情景を想像させる作品です。雪解けのわだちの中、路面を踏みしめる利用者の歩行を、四つの車輪が力強く支えています。今、福祉用具には自立支援の役割が強く求められていますが、まさに厚生労働大臣賞にふさわしい作品といえます。
経済産業大臣賞は大阪府の才脇信吾さんの「ふれあい」です。野外での音楽祭。サックス奏者が電動車いすを自在に扱っての演奏です。観客もご本人も音楽を楽しんでいる、そんな雰囲気が伝わってきます。障害の有無に関係なく誰もが人を喜ばせる側になれたら。夢を実現するには福祉用具の更なる技術進歩と普及を期待したいところです。作品の中の奏者のたくましさから、そんな事を考えさせられます。その意味でも経済産業大臣賞にふさわしい作品といえます。
惜しくも上記3賞には漏れましたが、特選6作品、入選9作品はいずれも、福祉用具が生活に溶け込んでいる雰囲気や、利用者のいきいきとした表情を上手に伝えるもので、より上位の賞に値する秀作ばかりです。同様のコンテストがあれば再度のチャレンジを期待したいものです。
全体の傾向としては、テーマを「車いす」にしている作品が多かったようです。これは福祉用具の技術的な進歩や社会基盤の整備により、車いす利用者の外出機会も増えて、それが日常的な光景になってきたとも言えます。一方、一般の方にとって分り易い福祉用具が、未だ「車いす」にとどまっているという解釈も成り立ち、今後の福祉用具の普及における課題を示しているようにも思われます。
いずれにしても、これら福祉用具を表現した優れた作品を、未来に向けた貴重なメッセージとして活用していく事が、このコンテストの意義を高めていく事にもなります。そして、それはとりもなおさず、福祉用具の発展と私たちの生活の豊かさにもつながっていくことでしょう。
平成16年10月13日 「福祉用具の日」記念フォトコンテスト 審査委員長 京極 高宣(日本社会事業大学学長) |
審査後、委員でもある内田洋司氏に、フォトジャーナリストの立場から、各作品への思いを寄せてもらいました |
◆「ゴールをめざして 東京都 辻川 吉夫さん(45歳)
マラソン大会で懸命に走る子供と、それを見守る人たちを撮りました。
<内田洋司氏コメント> 躍動感に溢れ、活き活きとした表情。子供達は何時でも自分を精一杯身体で表現するのですね。主題からポイントを外さず、しかも盛り上がった場の雰囲気を巧みに捉えました。シャッターチャンスもレンズの選択も適切です。審査員全員が文句なく選びました。 |
◆「雪にも安心」 愛知県 奥野 喜久雄さん(64歳)
雪の外出に、これさえあれば自由に歩行できる。
<内田洋司氏コメント> 今や違和感のない見なれた光景です。それだけ高齢化が進んだのでしょう。雪にも負けず頼りの介護機具を使って外出するお年寄り。反面この写真は社会の現状を象徴しています。このお年寄りから自立精神と元気をもらいました。 |
◆「ふれあい」 大阪府 才脇 信吾さん(75歳)
音楽を通じてふれあいを大切にと電動車椅子を自分の足として活躍する人。たくましく感じた。
<内田洋司氏コメント> 最新式の電動車椅子に取付けられた譜面台。サックスと移動手段さえあれば何処へでも出かけて、気軽に演奏する前向きな気持ちが伝わってきます。聴衆も思い思い気楽に楽しんでいる様子。画面構成も無駄無くしっかりとした写真です。 |
◆「車いすの人も一緒に入れる」 大阪府 大向藍さん(25歳)
<内田洋司氏コメント> 真夏の海辺で「ハイ!チーズ」。記念写真ですが気のおけない仲間達と海水浴を心から楽しんでいる雰囲気が良く表現されています。砂浜でもOKなサンドバギーの様な車輪があるのですね。とても素直な写真に魅せられました。 |
◆「納涼のひととき」 埼玉県 新井信一郎さん(83歳)
<内田洋司氏コメント> いつもの仲間同士の付き合いが見る側に伝わって来ます。写真としてはストレートな表現の仕方ですが、とても素直に雰囲気を捉えています。余分な物を切り捨てて目一杯迫った効果が出ています。 |
◆「妹とおでかけ」 青森県 白戸恵さん(32歳)
<内田洋司氏コメント> 車椅子にかけたリュックサック。兄妹仲良く手を繋いでこれから何処へ?この写真には二つの要素があります。福祉用具の使用、それを支える家族。そして公共の場の点字ブロック。今回のテーマをとても良く表現しています。 |
◆「表現は自由自在!」 東京都 種村潔さん(48歳)
<内田洋司氏コメント> なんとまあ屈託の無い笑顔でしょう。自分が出来ることで自分を表現する喜びがストレートに伝わってきます。惜しむらくは円で挿入された写真が説明過多になってしまいました。彼の笑顔と彼が使っているパソコンだけで十分良い写真になっているのです。 |
◆「ナイスキャッチ!!」 兵庫県 杉江輝美さん(59歳)
<内田洋司氏コメント> 犬の訓練だそうです。フリスビーを見事キャッチ、今度は僕の出番と大人しく待機している仲間。それを見事に成し遂げた時の若者と犬との共有する喜びがタイミングよく表現されています。 |
◆「看板親爺」 宮崎県 井口克宣さん(50歳)
<内田洋司氏コメント> オシャレなお祖父さんとモダンな店の取り合わせがなんとも言えず高齢化時代を先取りしている様で、吸い殻入れの日本語がなければまるで外国のワンシーンみたいです。街頭スナップとして、とても洒落た写真になっています。 |
◆「私の自家用車」 神奈川県 佐藤 繁美さん(69歳)
<内田洋司氏コメント> 特別な日なのでしょうね、腕によりをかけて料理を作っている様子。家族の暖かさが漂う生活感のある写真です。もっと欲張って色んなアングルから沢山撮ってみたら新しい発見があるはずです。 |
◆「手作りの車椅子」 香川県 美藤 明さん(60歳)
<内田洋司氏コメント> 事故なのでしょうか。飼い主のどんな事があってもペットと一緒という愛情ある写真です。恵まれた環境にいるペットも幸福ですね。優しい目をしています。信頼関係があるからこそですね |
◆「優しさ」 長野県 宮沢 千春さん(41歳)
<内田洋司氏コメント> ドキュメンタリータッチで光の当たり具合も周りの視線も決まっています。シャッターチャンスを逃しませんでした。何時もカメラを持ち歩いていなければ撮れない写真で、公共機関のバリアフリー化を提言しています。 |
◆「祭り」 鹿児島県 山田 宏作さん(44歳)
<内田洋司氏コメント> 揃いの法被と編笠で、お年寄り達が心から楽しんで、活き活きとした表情がとても素敵です。年老いても社会のイベントに参加できる喜びがうまく表現できています。 。 |
◆「かっこe〜自閉症児 With箸蔵くん」
大阪府 小田 多佳子さん(41歳)
大阪府 小田 多佳子さん(41歳)
<内田洋司氏コメント> 美味しそうなお弁当も残り少なくなりました。身体の機能を補う箸蔵くんと何時も一緒。心強いですね。もっともっと箸蔵くんが活躍しているシーンがあったと思います。シツッコク狙ってみて下さい |
◆「ファミリー」 茨城県 朝香 俊雄さん(72歳)
<内田洋司氏コメント> 暑いけど楽しいひととき。家族全員で散歩ですか。青空のもとひさしぶりに皆一緒に出かけた楽しさが良く表現されています。清清しい写真です。 |
◆「通勤風景」 大阪府 吉川 勝磨さん(55歳)
<内田洋司氏コメント> 何もかも自分で・・・。最近は福祉車両にもメーカーは力を入れているようです。行動範囲が一挙に広がりますね。意図は伝わりますが、撮影場所とカメラアングルにもう少し工夫があればもっと的確に表現できるでしょう。 |
◆「日光浴〜ぼくにぴったりカタツムリハウス〜」
兵庫県 本田 真由美さん(34歳)
兵庫県 本田 真由美さん(34歳)
<内田洋司氏コメント> 子供はなんでも遊びにしてしまう天才です。庭先に干した介護用品もこの子にとっては意外な使い道があったのですね。いつまでもこんな気持ちを持ち続けたい思いになります。とてもかわいらしい素敵な写真です。 |
◆「いい天気だね」 東京都 伊藤純子さん(36歳)
<内田洋司氏コメント> 日向ぼっこをしながら語りかけるとても優しいお姉さん。花が一杯溢れる庭も優しい家庭の雰囲気が伝わってきます。微笑ましい一コマです。写真は横長ばかりではありません、縦長もありですよ。 |